ブログ「私の古文書学習法」保管箱 2017
もう少し早く出会っていたら、と思う反面
今が出会いのタイミングだった、と思えた本
「図録 古文書入門事典」(若尾俊平編著、柏書房)
2017年11月4日
これも古文書仲間から薦められた一冊。
初版が1991年というのだから、26年も前には世に出ていたことになる。手元のものは2013年発行のもので第10刷(新装版)である。広く普及している本のようなので、書店に並んでいたこともあっただろうけれども、僕には「見えなかった」のだろう。古文書を学び始めるとき、どうしても「くずし字」を読むことに意識が向く。そのため「くずし字事典」のようなものにだけ目が向いていたような気がする。もっとも、貪欲に参考書を探した覚えも無いので、それ以前の問題だったとも思う。
今まで体験的に身につけてきたものが、というよりは行き当たりばったりに継ぎはぎしてきた知識が、この本には整然と載せられている。僕は、初歩から学び直すというよりは、「答え合わせ」のようなつもりで読んでいる。仕事として読んでいる古文書には「模範解答」が無いので、読んだものが正解か不正解か、正直なところ不安はあるので、その「答え合わせ」ができるのはありがたい。また、特に江戸時代の制度や書類の様式に関する事柄は知識として押さえているのといないのとでは解読のスピードに差が出て来るので、営業上も有益である。
この本は「図録」とあるように、江戸時代に描かれた絵が多数掲載されている。余談になるが、本書の79ページに「イジメ」(イズメ)という道具が紹介されていたのを見て懐かしい思いがした。藁で編んだ「ベビーベッド」なのだが、弟が入れられたいたのを、おぼろげに覚えている。昭和30年代のことだ。岩手の僕の生まれた地方では「エンヅッコ」と呼んでいたが、「ッコ」は「べごっこ」(牛)のように物の名前の語尾につけられるので、この「エンヅッコ」は「エンヅ」ということになるが、「イジメ」(イズメ)と語感が似ているので、おなじ語源を持つのだろう。
60代以上の方であれば、特に農村体験のある方であれば、昔語りのネタとしても使えそうな一冊である。もちろん「くずし字」の勉強にもなります。